Siteseeing tour  社会科見学 ハザマの仕事
Siteseeing tour  社会科見学 ハザマの仕事  


建設アウトサイダーのイワサキ (イラストレーター)&フジタ(ただの工事現場フリーク)がハザマの仕事場を訪問、見学記をお送りします。

おことわり:サブタイトルのsiteseeingは造語です

←社会科見学のしおりはクリックしてみてね
第 1 回  都心地下に高速道路と換気所をつくる
第 2 回  RCD工法でダムをつくる
第 3 回  文化財修復という仕事
第 4 回  春日市立白水小学校新築工事
第 5 回  徳島東環状線・東環状大橋
第 6 回  金沢こども医療福祉センター
第 7 回  東京建築第一支店営業推進部
第 8 回  弁慶トンネル
第 9 回  広神ダム
第10回  大阪セントバース教会
第11回  九州新幹線・緑川橋梁工事
第12回  紀文食品岡山総社工場新築工事
第13回  新若戸道路 沈埋トンネル部(3号函)製作工事
第14回  中性子遮蔽コンクリート
第15回  小浜市最終処分場新設工事
第16回  千葉市・中央雨水1号貯留幹線
 
3Dねじれ建築

東京の新しい地下鉄「副都心線」の北参道駅は、
ゆるやかなS字を描いている。
それは、図面を見慣れない私たち素人にとって、
教えてもらって初めて、それと気づくような、
かすかな曲線だ。

ホームの端に立って見渡すと、
確かにカーブを描いているのが分かる。
しかも、水平方向にも傾きがある。
ぼんやり立っていたら、気づかないくらいの傾きだけれど。

このホームは、3Dに「ねじれている」ではないか!

地下鉄やインフラが錯綜している東京の地下には、
こうした「ねじれた」駅がたくさんあるのだろう。
「3Dねじれ建築物」はどうやってつくられるのか。

■水平と平行の悩ましい関係
今回現場を見せてくださったのは、
南雲弘士所長、41歳。
入社17年目で、駅は初めて。

というか、
この時代、地下鉄を発注する会社にも、受注してつくる会社にも、
その会社人生の間に、
駅を2回以上手がける人は
そうそうはいない、いや、ほとんどいない、のだそうだ。

しかも、駅に期待されるアメニティは
この数年で、格段に高くなっており、
過去の駅づくりがあまり参考にならない。
かつて、入りたくないトイレの代表格でもあった「駅のトイレ」は、
今や、デパート並みの快適空間だ。
その意味でも、初めてのことばかりの工事なのだという。

女性トイレのパウダールーム

男性トイレにもベビーチェア完備
「建築の基本は地球の重力方向に直角、すなわち水平」に従って仕事をしてきた
南雲所長は、ここで3Dねじれに遭遇。
その常識を捨てなければならなかった。

じゃあ、駅って、何を基準にしてホームをつくるんですか?
「線路です」
鉄道建設でいちばんエライのは、線路なのだそうだ。
すべてが線路に従う。

ホームは線路に平行につくられるため、
3Dにねじれる。
が、そこにあるドアなどは重力に対し、水平につくらなくてはならない。
窓やドアは、一緒にゆがむわけにはいかないのだよ。

空間図形が苦手な人にはガルルルル。

もっとやっかいなのは、線路に平行に曲線を描いたホームに、
直線の連なりであるところの電車が停車することだ。

ガルルルル〜。

「車両ごとに通り芯をとり、かつ傾斜分も計算してホームをつくる
という、基準がありすぎて、ないような、複雑さでした」

ガルルッ(電池ぎれ)
■ぴしっとつくれば、ぴたっと停まる
鉄道建設には、「建築限界」というのがある。
安全な走行のために設けられた車両の大きさの数値だが、
もう電車の大きさは決まっているから、線路と車両に合わせて
ホームなどの建築をすることになる。
曲線と車両の傾き、これらを計算に入れて、
直線の車両がすべてぴたっと、安全に停車できるものをつくらなくてはならない。
しかも鉄道マニアからの不確かな情報によれば、
乗客数や速度によっても車両の傾きというのは左右されるらしい。
電車を停める、というのは建設から停車技術に至るまで、
なかなかレベルの高い技の集合なのだ。

安全走行のため、ある程度できたところで、
「建築限界測定車」というのを走らせて、構築物に当たる部分がないかを実験する。

建築限界測定

綿密な計算でつくられていても、
やはり、当たる部分が出たという。
そこをまた手直しする。
こうした作業の積み重ねで、電車は安全に走っているのだそうだ。

■おそるべし、新地下鉄「副都心線」
東京の新地下鉄「副都心線」は、
6月14日、華々しく開業した。
池袋、新宿(三丁目)、渋谷を結ぶ、
たった8.9キロの路線なのだけれど、もう、大変。
いろいろな経済効果予測がにぎやかなこと。
この路線の開通で、この一帯が「副都心」ではなく、
「都心」になるのでは、という観測もあるほどだ。

東京の地下鉄路線図
(青で囲った部分が今回開通の副都心線)
東京メトロホームページから

新聞や雑誌のたいていの見出しは
「和光市―渋谷間が25分!」
この和光市っていうのは、埼玉県。
副都心線に乗り入れる路線の埼玉の人たちが、
今までどおり、池袋を利用するか、
そのまま降りずに、新宿、渋谷に流れていくか、が注目を集めているらしい。
なんで、都民のワタクシより、埼玉県民のイワサキのほうが
オイシイ思いをするんでしょう、プンプン。

■地下鉄のフシギ探し
見学させていただいたのは、
開業まであと2週間という日。
実際のタイムテーブルどおりに、試運転が行われていて、
ひっきりなしに電車が通る。
そのたびに、背後で鉄道マニアがひそかに興奮しているのを感じるが、無視。
見学前に所長に教えて頂いた、
ふだんは気づかない、いろいろな「ミステリー」を
イワサキと二人で探して歩いた。


通路にも、地下だから、当然傾斜がある。
それを利用者があまり感じないよう、
壁のタイルなどは、傾斜にそって張られているが、
ここでも、ドア、窓などのつくりものはそういうわけにはいかない。
こちらは通常の建築物のように、「重力に素直」なので、
「これ、ヘンじゃない?」というドアが通路にはある。

夏休みに、子どもと一緒に、地下鉄駅の不思議さがしも面白いかもしれない。
8月30日に、自由研究がまだだという、そこの子ども!
このアイディアを譲ってあげよう。

「副都心線」をめぐる話題は、当分続くだろう。
ほかの駅ほど注目はされていないが、
このちょっと小ぶりの駅にも降り立ってみてほしい。
デザインや決して角のない柱など、
新しい駅のディテールを楽しむことができる。

この現場には新入社員も配属されていた。
新人くんが、もう一度新駅を手がけることがあるかどうか、
それもちょっと興味あるけど、そのころまだ生きてるかなあ。
鉄道建設はスパンのなが〜い話です。