■壊れたところは直す、では、ずれたものは、どうやって元にもどすか?
「ごく大雑把に言うと、まずH鋼で柱を押さえ、全体をジャッキアップします。建物正面と背面では、ずれの大きさが違うので、正面は3センチ、背面は10センチ持ち上げました。これを揚家って言います。
そして次に、柱のずれの大きさや方向は、下図のようにあちこちさまざまなので、動かしたい方向に従って、コロを入れたり、テフロン板を入れたりしました」 |

見づらいですが、災害直後の柱の位置。
クリックすると大きくなります。 |

動かした後の柱の位置。 クリックすると大きくなります |
「コロとテフロン板の違いは?」
「コロは一定方向に動かしたいものの下(右写真参照)、テフロン板というのは、世界一摩擦係数が低いと言われている部材なんだけど、コロで動かしている部分とのバランスで方向自在にしたい柱の下(左写真参照)に入れました」
「はあ、なるほど…」
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こちらがテフロン板 |

こちらがコロ |
「次は曳家と言われる作業。柱に巻きつけたワイヤーロープをウインチで曳いて、柱をもとの位置に戻します。これも正面側と背面側のずれの大きさが違うので、途中に動滑車を入れ、かかる力を調節できるようにしました。ほら、動滑車を入れると引く力が2分の1になるって習ったでしょう?」
「・・・」(物理はいつも38点)
でも、仕組みはなんとなく分かった!
ただ、何のハイテク技術も使わずに、昔風とも思えるこうした作業で、木造とはいえ、こんなに大きな建物が動くんですねえ。だが、この方法でもっとすごいことが起きた。
あちこちの方向に動いた柱は、この数回の曳家と微調整でそれぞれ元の位置に戻った。そして、柱の位置が元の礎石の上に戻ると、驚いたことに傾きも自然に元に戻ったという。
「これを見た時は、木ってすごいな〜って思いましたよ」
建物自身に復元力があるのだ。途中何度か修理の手が入っているとはいえ、390歳にもなろうという建物のすごさ、つくった時代の職人の技術のたまもの。
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■ディティールに宿る魂
大きな作業が終わったら、次は細かい修復作業が始まる。
奉弊殿の屋根は柿葺き(こけらぶき)。これは、平均板長1尺×厚み1分×葺き足1寸程度の椹(さわら)の木の板を重ねていく葺き方。この職人集団、児島工務店さんは、日本全国あちこちの寺社を手がけているという。
急傾斜の屋根に椅子をかけ(右写真が屋根の上の様子)、1枚1枚竹釘(竹ひごを炒った釘)で打っていく。技術以前に運動神経の悪い人にはとうていできない仕事。見ているこっちがくらくらしてくる。
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